その日の夜、ベッドに入った俺は、中々眠れなかった。

砂月に取り憑いた人物が、その家族に会って話すなんて、本当に可能なんだろうか?砂月が奇異の目で見られるだけじゃないだろうか。

それも相手は、認知症を患っているご主人だ。中身がカヨさんでも、見た目は、砂月の事を、茂さんは、分かってくれるなんて事ができるのだろうか。

「はぁぁぁぁっ……」

腹の底から吐き出した、ため息は、真上の白い壁に吸い込まれていく。

その時、枕元のスマホが震えて、ラインのメッセージが届いた。砂月からだ。

『彰、もう寝ちゃった?』 

俺はすぐに返信する。

『起きてるよ、どした?』

砂月も、明日のことを考えると、不安なのかもしれない。

『明日、茂さん、気づいてくれるかな』

『分からないけど、でも少なくとも、砂月の気持ちはカヨさんには伝わると思うよ』

そうだ、例え、茂さんに気づいてもらえなくても、カヨさんは、あの世へ旅立つ前に、最愛のご主人に、もう一度会えるのだから。