その時、耳につく甲高い音が、電飾灯と共にこちらに向かってくる。

「緊急車両が通ります、ご注意ください」

赤信号を直進すると、そのまま走り去っていく救急車に、俺は、言葉を失った。

ーーーーいつもなら気にしない。気にしたこともなかった。関係ないって思ってた、いつも砂月と一緒だから。

でも今日は違う。もし……砂月だったら?もし……砂月が憑かれていたら?
憑いてる奴が死んだことに悲観して自暴自棄になって砂月を連れて逝こうとしたら?


ーーーーやめろやめろ!違う。そんなこと絶対ない! 

絶対?……絶対なんて言い切れるか?

絶対、明日すら、ちゃんとくるなんてわからない。今日も、必ず砂月に会えるかなんてわからない。絶対も、必ずもない!だから、砂月の側に居なきゃダメだったのに!

俺は、もう一度、震える指で砂月の番号をタップする。砂月の行きそうな場所なら、いくつか頭に浮かぶが、憑いてるヤツの行きたい場所となると、まるで検討がつかない。