ーーーー次の日の朝、砂月は、初めて、俺を起こしに来なかった。

来ないと思ってたから、俺は初めて目覚ましをかけた。砂月と通学の時間が重ならないように砂月のいつもくる時間の十五分後に鳴らした。

制服に着替えて扉を開けると、小さな巾着袋がメモと一緒に置いてある。

『今日はシャケだよ。彰、いつもごめんね』

そう短く書いてあった。なんで、砂月が「ごめんね」なんだよ。

ーーーー謝るのは、勝手に嫉妬した俺の方なのに。

シャケおにぎりを頬張りながら、俺は、砂月の笑顔を思い出す。今日は、俺の漕ぐ自転車の右側に砂月は居ない、俺は、無性に砂月に会いたくなった。

どんな顔したらいいのか、何て言ったらいいかわからないけど、会いたい。

俺は、ひたすら学校まで無心で、自転車を漕ぎ続けた。いつもより、少し早く学校着いて、俺は、砂月のごめんね、の意味に気づく。

いつも砂月を見ながら、憑かれないように辺りを確認しながら走る分、通学に時間がかかるのだ。自分を気遣って登校する事への申し訳なさからの「ごめんね」だ。

ーーーー馬鹿、違うだろ。全然。俺が砂月の側に居たくてしてることなのに謝んなよ。いつもみたいに、ありがとうって笑ってれば、いいんだよ。

伝えたい言葉と想いを、余すことなく、ちゃんと声に出せたら、どんなに楽だろう。