俺は、砂月の手を引いて、勢いよく教室を飛び出した。

余程、怖い顔をしてたのかもしれない。砂月は一言も喋らずに、俺に手を引かれていた。

家までの一時間、砂月と話さなかったのは初めてだった。その間も、俺は、駿介と砂月の姿が頭から離れなかった。

駿介のああいう行動は、別に今に始まったことじゃない。けれど、少し頬を赤くした砂月を見て二人がお似合いだと思った。

多分、これが世に言う嫉妬というヤツだ。いま口を開いたら、ろくでもないことを口走って、砂月を傷つけてしまいそうで、俺は黙ってるしかなかった。

「あ、あの……彰」

家の前で別れる時、砂月が、俺に何か言いたげに小さくか細い声を発した。

「何?」

何かなんて分かってるくせに、俺は、意地悪く返事を返した。

「あの、彰怒ってる、の?……その駿介くんに相談があって」

「どうでもいい。何?駿介が好きなのか?」

「ちがっ……、その」

砂月は、ギュッと下唇を噛んだ。砂月のその表情に、俺は無性に腹が立った。

「そんなに駿介がいいなら、明日から駿介に迎えにきてもらえよな!じゃあな!」

俺は振り返りもせずに、自転車を玄関先に停めると家の中に入った。

「……くそ、何でだよ……」

今までも気づかなかっただけで、砂月が駿介に密かに想いを寄せていたとしたら?あんな頬を赤らめながら、駿介を見つめる砂月を見たのは初めてだった。

ーーーー砂月は、駿介の事が。

そんな事が頭にこびりついて離れない。

その夜、俺は瞳を閉じる度に、二人の姿がフラッシュバックして、なかなか眠ることができなかった。