「砂月は何て?」

「別に……自分の問題だから、俺には言いたくないってさ」

「で、拗ねたんだ、ガキだな」

「もう拗ねてねーよ!」

「拗ねて怒鳴った奴がよくゆーよ」

俺が、押し黙ったのをニヤニヤしながら、駿介が眺めている。

「やっぱ、砂月はいい女だよな」

駿介は、再び仰向けになると、長い足を組みながら目線を藍色の空向けた。

「はぁ?」

「砂月がさ、何、隠したいのか俺にも全く分からねぇけどさ、でも、咄嗟に嘘を()こうと思えば()けたにも関わらず、お前に嘘()かなかったってことじゃん」

駿介の言葉を繰り返しながら、俺は、真上に広がる、もみじの葉の重なりから、僅かに見え隠れする月を眺めていた。

「砂月には、俺に……何でも言って欲しいんだよっ」

「完全に、お前の独占欲と我儘だな」

駿介が、口元を引き上げながら、真上を指差した。

「こっから見える景色と一緒だよ。本当に見たくて、知りたいものは、葉っぱで覆われて、ほとんど見えやしない。月の光を感じれるのなんて一瞬。人間ってそんなもんだろ?全部見せれる奴なんていないよ。そんなかに一番大事なものあれば、それでいいじゃん」

駿介は、夜風に揺れて、落ちてきた緑の葉を、掌に乗せると指で摘んで、くるくると回してみせた。