「みんな有難う、さ、桃からもお礼を言いなさい」
桃が、谷口先輩の胸から、ぴょんと飛び降りる。
「ありがとうっ」
桃がようやく、満面の笑みで、にっと白い歯を見せた。
「あー……俺がやっぱ最後だよな、桃、見つかって良かったな」
背後から、疲労感たっぷりに俺達に声をかけた声の主は駿介だ。
「駿介、この通り桃は無事だ!悪かったな」
いーえ、と駿介が短く答える。
「で?これ何?砂月も憑かれてないみたいだし、もしかして一件落着か?」
俺達を見渡しながら、駿介が、不機嫌そうに、きゅっと目を細めた。
「そうそう、お前、今回ビリな」
「は?彰、なんだよそれ、競争してねーだろ」
「ずいぶんとおそかったわね、ちゃいろのさる」
「おい小猿!てめぇのせいだろ!」
駿介が、桃の首根っこを捕まえようと手を伸ばす。
はいはい、お終い!愛子のパンパンと鳴らされた両手で、この件は静かに幕を閉じた。
「彰……」
気づけば、砂月が、不安そうな顔で俺を見上げている。
さっき砂月をキツく怒鳴ったことが、頭を掠めた。
「偉かったな」
気まずい俺は、それだけ、言って砂月の髪をくしゃっと撫でた。