「で、でも……ダメだったの」

「え?」

砂月の瞳からも涙が、溢れ始める。

「どんなに干渉しても、どんなに願ってもダメだった」

砂月は、膝をつくと桃を抱きしめた。

「お父さん会いたいよね、ごめんね」

「……これは、どう……いうことだ?砂月くんは?」

俺たちの顔を、交互に見ながら谷口先輩が、困惑している。

「谷口先輩、砂月は、特異な体質で霊に憑かれやすいんです、信じられないかとは思いますが」

愛子が、端的にそう答えた。

「だから、桃ちゃんの為に、谷口先輩のお父さんに憑かれようと思ったんです。桃ちゃんに会わせる為に」

「そんなことが?……」

「先輩、信じられる方が難しいと思うんで、こういうのって」

少しの間、谷口先輩は難しい顔をしていたが、やがて納得したかのように口を開いた。

「……いや、彰、信じるよ、……だから、君が、砂月君を此処へ連れてくることを、拒んでいたことへの説明がつく」

谷口先輩は、すこし間を空けてから、小さく深呼吸した。

「……桃、先に一つ聞くが、なぜ此処が分かった?」

「……おにいちゃん、まいつき、かならず、ここにひとりできてるでしょ?いちどだけ、お兄ちゃんのあとをつけたことあるの。おうちから、ここまでちかいから」

真っ赤になった瞳を逸らさずに、桃が、言葉を続ける。