「ニャーン」 

こちらに擦り寄ってきたと思ったら、僕の胸元でゴロゴロと喉を鳴らす。 

漆黒の柔らかい髪に可愛らしい小さな鼻、そしてサイダー瓶から取り出した、ビー玉みたいに透明な大きな黒い瞳。手を小さく握りしめるようにして頬に擦り付けるような仕草をする。

これが僕らが知っている所謂『猫』ならば、何の問題はない。

ーーーーそう、『猫』ならば。

でも彼女は歴とした人間であり、その姿は通りすがりの人なら一度は振り返って魅入ってしまう程の美しさ。可憐さ。麗しさ。

どの言葉が一番シンプルに且つ彼女の美しさを表現できるのか未だに僕はわからない。

少し垂れ目の整った甘い顔立ちと華奢な手足。伸ばされた髪は胸まであり風に揺れてふわふわと踊る。風に揺れるたびに僕の心も揺れて、ふわふわと空高く舞い上がる。

彼女の名前は、砂月ーーーー三鈴砂月(みすずさつき)

 
ーーーー僕の愛おしき憑いてる彼女。