「見て分からない? 参戦しに来たのよ」

「邪魔だ! ここは妃が来るようなところではない!」

「あら、そうかしら。これを見て。血も出さず正気を失った衛兵を倒したわよ」

 雪蓉は地面に倒れ伏す衛兵を指さして言った。

「これは……」

 明豪は片膝をつき、武官の口から吐き出された赤い実を摘んだ。

「言っておくけど、殺してはないからね。気を失ってるだけだと……」

「違う、寝ているだけだ」

「寝てる?」

 雪蓉は、自分が倒した衛兵の顔を覗き込んだ。目を瞑ったまま動かないが、息はしている。  

 気を失っているのか寝ているのか、雪蓉には分からなかった。

「こいつに何をしたんだ?」

「何って、平低鍋で頭を思いっきり殴ったのよ」

「すると、この実が出てきたってわけか……」

 明豪は興味深げに赤い実を見つめた。

「それ何?」

 雪蓉が明豪に聞くと、答えは思わぬ方向から聞こえてきた。

「それは、仙術のかかった毒実じゃ」

 上から声が降ってきて、雪蓉は顔を見上げた。

 すると、真上にある木にちょこんと乗った小さなお婆さんがそこにいた。

「仙婆!」