対して北衙禁軍は、彼らを傷つけたり殺したりしては、饕餮が血の匂いを嗅ぎつけてこちらに向かってくることを恐れ、防戦一方となっていた。

 衛兵たちの目は、真っ赤に充血し、低いうめき声をあげている。明らかに正気ではない。

 北衙禁軍を指揮する総司令官は、明豪だった。

 明豪は、明らかに戸惑っていた。切り殺すわけにもいかず、かといってこのまま騒ぎを続けては、饕餮がいつ来てもおかしくはない。

 正気を失った衛兵たちに叱責の怒号を上げるも、彼らはまるで聞こえていないかのように攻撃してくる。

 焦る気持ちは雪蓉も同じだった。

このままでは作戦は失敗に終わり、全滅してしまう。

「ううっるさぁぁい!」

 雪蓉は頭に血が昇って、持っていた平低鍋で、正気を失って攻撃してくる衛兵の頭を叩き落した。

「静かにしていろって命令が下ったでしょうが!」

 頭を平低鍋で殴られた衛兵は、地面に横たわると、体から赤い蒸気が昇り、風と共に消えた出てきた。

そして、気を失ったのか、指一本動かなくなった。

 倒した衛兵を見つめながら、ハアハアと肩で息をする雪蓉に、明豪が気付く。

「貴妃ではないか! なぜこのようなところに!」

 明豪は恐ろしい形相でこちらに向かって来た。

 怒られると思って萎縮したが、叱責が怖くて戦えるかと思って、気持ちを立て直す。