「ふざけるな! 子ども扱いする……な……」

 雪蓉の突然の提案に最初は勢いよく否定していたけれど、あることが思い浮かんで、言葉尻が萎んでいった。

(まてよ、これは、絶好の機会じゃないか? 

俺がどんなに言ったところで一緒に寝てくれるはずはないが、本人から提案された。

雪蓉は俺を子ども扱いして肝心なことを忘れているが、男と女。

一夜を共にしたらもしかしたらという展開があるかもしれない)

「まあ、どうしてもというならば、寝てやってもいいが……」

 劉赫は満更でもなさそうな顔で目線を外して言った。

「別に嫌ならいいのよ」

「嫌じゃない!」

 勢いよく否定した後、はっと我に返った。これでは俺の魂胆に気付かれてしまう。

「嫌、ではない。一人よりも、誰かが側にいてくれた方が悪夢も見ないだろう」

「そうでしょ。私の子守歌はよく眠れるって評判なんだから」

 子守歌はいらない、と思いながらも頷いた。

ここで警戒されてはせっかくの好機を無にしてしまう。

相手は俺を子どものようだと思っている。それは癪だが、使わない手はない。

「いつ来る? 何時頃来る?」

「それは公務が終わった頃に……」

「今日はすぐ終わる。とても早い。いつでも来ていいぞ」

「なんか、意外と積極的ね……」

「そんなことはない、断じてない。正直、子ども扱いされて困っているが、人の親切心は素直に受け取れと臣下に言われている。皇帝として大切なことだと」

「そ、そう……」

 その後、劉赫の機嫌がとても良かったのは、語るまでもない。