「ほう?」

 内侍監は、片眉を上げ、興味深そうに雪蓉を見た。

「私を帰してください」

「それは無理だ」

 あっさりと却下される。

しかし、ここで食い下がるわけにはいかない。

「どうしてですか⁉」

「劉赫様は、君の作った料理しか食べないとおっしゃられている。君がいなくなったら、また何も食べなくなってしまうだろう」

「じゃあ、私以外が作った料理を食べるようになればいいんですね?」

 雪蓉以外が作った料理でも、味を感じることができるようになれば、雪蓉はお払い箱のはず。

「……まあ、劉赫様が許せば」

 内侍監はにこにこと微笑を浮かべて肯定した。

 そもそも、全ての元凶はあいつだ。

劉赫を説き伏せなければ、帰ることなんて不可能だ。

 なんとか劉赫の味覚を治して、家に帰る。

あわよくば逃げ出せたとしても、また引き戻されたら意味がない。

そんな当たり前のことに、今さら気が付いた。

「……やりましょう」

 燃えたぎる闘志を(みなぎ)らせる雪蓉を前に、内侍監は「うん、宜しくね」と軽く返事をした。