「いや、だから、断じて俺は……」

 慌てて弁解に入る劉赫に、雪蓉は手を前に出して拒絶を表す。

「いい、もう、いい。あんたが真性の好色家で、助平で、変態で、不埒な男だっていうことは、よ~く分かった」

「いや、だから……」

「いい? よく聞きなさいね。あんたが人の話をまるで聞いていないってことは経験済みだけど、これだけは覚えておいて。

あんたがもし、私に手を出してきたら、私は迷うことなく舌を噛み切って死ぬわ。

もしも、舌を噛み切らないように、拘束されて口に何かを入れられて阻止されたとしても、私はその後、どんな手を使ってでも命を絶つわ。

女巫である私が穢されたら、もう女巫には戻れない。

それならば、私は死を選ぶから」

 雪蓉の目に、偽りは微塵も見えなかった。

脅すために言ったのではない。

言葉にして、決意を固めるために言ったのだと分かった。

さすがの劉赫も息を飲む。

「……分かった。ならば俺も、お前の作った料理しか食べない」

「え?」

「ここで誓う。俺は、例え死のうとも、お前が作った料理しか口にしない!」

 高らかに宣言され、雪蓉は面食らう。

どうして、そうくる。

「いいか、分かったな!」と謎の念押しをされ、劉赫はいきり立ちながら、雪蓉の室を出て行った。

 残された雪蓉は呆気に取られて固まる。

(……意味が分からない)

 劉赫の捨て身の本気が分かるのは、それから数日後のことである。