「……それなら、貴妃じゃなくて、宮廷の料理人でいいじゃない!」

 もっともな言葉に、劉赫はたじろぐ。

「それじゃ駄目だ」

「どうして。私の料理が食べたかったんでしょう?」

「宮廷の料理人なら、受け入れたのか?」

「受け入れるわけないでしょう!」

「なら、貴妃でいいだろう」

「よくないわよ! ていうか、軽々と論点かわそうとするんじゃないわよ!」

 劉赫は逃げられないと思ったのか、渋い顔で黙り込む。

そして、本人の意図とは真逆に、つい口から本音が出てしまった。

「……妃にすれば、あんなことやこんなことができるからとは、断じて思っていないぞ。そう、断じて」

 雪蓉の引きっぷりは凄かった。

心身ともに引くとはこういうことを言うのかと、なかば感心してしまうくらいのどん引きだった。

 雪蓉は音もなく、すさまじい勢いで劉赫から離れ、室の端まで後ずさりした。