「お前の言い分は分かった」

 感情の起伏を見せず、平淡な物言いだった。

 元より、拒まれるのは計算の内だ。

「分かってくれたみたいで良かったわ」

 案外聞き分けが良かったので、雪蓉はほっと胸をなでおろす。

しかし……。

「捕獲しろ」

 劉赫の口から出た思わぬ言葉に、雪蓉は目を丸くする。

「ほ、捕獲!?」

 動物じゃあるまいし、と言いかけたところで、武官たちが雪蓉を取り囲む。

「待ちなさいよ、こんなの人権侵害よ! 卑怯者! 非道! 鬼畜! 人でなし! それと、ええと……甘えん坊!」

 雪蓉は襲い掛かる武官に囲まれながら叫んだ。

思い浮かぶあらゆる悪口を並べたてる。

妃になるくらいなら、不敬罪で処罰された方がいい。

「それをいうなら甘党だ」

 眉間に皺を寄せ、心底不服そうに、劉赫が訂正する。

他の罵詈雑言はまったく気にしていないようだが、甘えん坊は別らしい。

「私は絶対、妃なんかにならない……から……ねー……」

 雪蓉が叫んだ言葉尻は、武官たちに抑え込まれ、儚く消えていったのだった。