「三食三晩これだけでもいいぞ。一生これだけしか食えなくても後悔はない」

「また回りくどい褒め方ね。ま、気に入ってくれたみたいで良かった」

 女は、自分が作った料理を美味しそうに食べてくれることが嬉しいらしい。

いつもはきつい雰囲気なのに、男が食べている姿を見る時の彼女の顔はとても柔らかくなる。

 そんな彼女を見ると、男の頬が熱くなって胸が締め付けられる。

黙っていれば天女のように美しいその顔を、直視することができなくなる。

(……飯が美味いから、つい長居をしてしまうんだ。打ち解けてきた彼女と離れるのが惜しいからではない。そう、断じて)

 男はなぜかむきになって自分にそう言い聞かせた。

「さすがにこれだけじゃかわいそうだから、これもあげる」

 女は懐から袋を取り出し、中から一つ摘まみ上げた。

「それは?」

 半透明の輝く四角い個体は、まるで宝石のように綺麗だった。

「琥珀糖っていうのよ。子供たちの大好物なの」

 女は微笑むと、半ば強引に男の口に琥珀糖を押し入れた。

「お、おい!」

 有無を言わさず口に入れられた琥珀糖は、口の中で甘くとろけた。

 思わず黙り込み、ゆっくりと味わうように咀嚼すると、シャリシャリと小気味のいい音がする。

 まるで呆けたように味わう様子の男を見て、女は不思議そうに顔を覗き込む。