男が目を覚ましてから二日目の朝。

驚異的な回復力によって、片足を引きずるようにして休みながら歩けば、山を下りることも可能なくらい回復した。

(多少無理をしても、早く戻らねばならない。きっと大騒ぎになっていることだろう。だが……)

「おはよう、ご飯持ってきてあげたわよ。感謝して敬いなさーい」

 女が足で扉を開け、器用にまた足で扉を閉める。

両手がお盆でふさがっているとはいえ、なんとも粗野な開け方だ。

「感謝して敬えと言われると、途端にありがたみが失せるな」

「助けてあげたのに、あんた本当に偉そうね」

 呆れた顔で男を見下ろす女。

お互いの性格の悪さを認識し、軽く受け流せるほど距離感は近くなった。

「今日の飯はなんだ?」

「焼きおにぎりよ」

「それだけか。どんどん質素になっていくな」

「あんたね、タダ飯食べてる分際のくせに文句言わないでくれる? 米だって高いのよ」

 ズイっと口の前に焼きおにぎりを出され、そのまま一口頬張る。

「なんだこれは……」

 口の中で広がる香ばしい醤油の味わい。

ホロリとほどける白米の旨味。

 男は女から焼きおにぎりを奪うようにして持ち、夢中になってかぶりつく。