「まだ新居はできないのか」
政務室で山積みの簡牘を読みながら、劉赫はおもむろに呟いた。
政務室の傍らで、護衛(実態は逃げ出して雪蓉に会いに行くことを阻止するために身張っている役目)していた明豪が呆れながら口を開いた。
「またその話ですか。総動員させて作っていますので、もうしばらくお待ちください。
というか、皇后の住まいを朝廷の中に作るなど前代未聞ですよ。
わざわざ一緒の寝室にしなくても後宮に行けばいいことじゃないですか」
「嫌だ。俺の帰る場所は雪蓉の元がいい」
(子どもか)
と明豪は思ったが、さすがに口には出さなかった。
家柄もない一介の女巫が皇后になるなんてあり得ないことだったが、皇帝が戻ってくれるなら皇后にでもなんにでもすると老臣たちは泣いていた。
そんなわけで、寝室を一緒にしたいと皇帝が我儘を言い出しても反対する者はいなかった。
もう好きにしてくれていい、辞めないでくれればそれでいいというのが皆の心境だった。
「あ~、早く雪蓉に会いたいな~」
一日に何度も口にする言葉。
もはや口癖となっている。
口を開けばこの言葉が出てきて内心うんざりしている明豪だった。
それでも、逃げ出さずにしっかり仕事をこなしている。
会いたくて会いたくて仕方がないというのは明豪もわかっていた。
それでも我慢して仕事をしているのは、劉赫も悪かったと思っているのだなと伝わるので、そろそろ許してやろうかという気持ちになっている。
政務室で山積みの簡牘を読みながら、劉赫はおもむろに呟いた。
政務室の傍らで、護衛(実態は逃げ出して雪蓉に会いに行くことを阻止するために身張っている役目)していた明豪が呆れながら口を開いた。
「またその話ですか。総動員させて作っていますので、もうしばらくお待ちください。
というか、皇后の住まいを朝廷の中に作るなど前代未聞ですよ。
わざわざ一緒の寝室にしなくても後宮に行けばいいことじゃないですか」
「嫌だ。俺の帰る場所は雪蓉の元がいい」
(子どもか)
と明豪は思ったが、さすがに口には出さなかった。
家柄もない一介の女巫が皇后になるなんてあり得ないことだったが、皇帝が戻ってくれるなら皇后にでもなんにでもすると老臣たちは泣いていた。
そんなわけで、寝室を一緒にしたいと皇帝が我儘を言い出しても反対する者はいなかった。
もう好きにしてくれていい、辞めないでくれればそれでいいというのが皆の心境だった。
「あ~、早く雪蓉に会いたいな~」
一日に何度も口にする言葉。
もはや口癖となっている。
口を開けばこの言葉が出てきて内心うんざりしている明豪だった。
それでも、逃げ出さずにしっかり仕事をこなしている。
会いたくて会いたくて仕方がないというのは明豪もわかっていた。
それでも我慢して仕事をしているのは、劉赫も悪かったと思っているのだなと伝わるので、そろそろ許してやろうかという気持ちになっている。