「ねえ、劉赫。あなたひとつだけ思い違いをしていることがあるわ」

「思い違い?」

 劉赫の顔がこわばる。

交渉決裂の嫌な予感がしているのだろう。

「私を知り尽くしていると思っているかもしれないけど、とても大事なことに気づいていないの」

「いや……、え……?」

 劉赫は明らかに困惑している表情を浮かべていた。

(この俺が、雪蓉に関する大事なことに気がついていない? そんな馬鹿な……)

「私ね、ずっとあなたのことが好きだったのよ」

 劉赫はあまりに驚きすぎて固まった。

指一本動かせないほど固まった。

 雪蓉が放った言葉の衝撃はそれほど大きかった。

 そんな劉赫の姿を見て、雪蓉は静かに微笑むと、そっと劉赫の頬を撫でた。

 劉赫は、まだ驚きすぎて言葉を失ったまま動けずにいた。

 雪蓉は愛おしそうに劉赫の頬に手を添えて、そして足の指先に力を入れて背伸びした。

 劉赫の唇に雪蓉の柔らかな唇が押しあてられる。

 雪蓉の目は閉じられているが、劉赫の目は見開いていた。

 軽く触れた唇が離され、雪蓉が恥ずかしそうに劉赫から離れようとすると、劉赫は雪蓉を思いっきり抱きしめ、無理やり奪うように雪蓉に口付けた。

 そのまま二人は長いこと抱きしめあった。