「仙婆のせいなんかじゃない。本当に悪いのは、その教祖様じゃない」

 雪蓉の言葉をまるで聞こえなかったかのように、肯定も否定もせず仙は話を変えた。

「四凶はどれも、元は人間だったのじゃ。

欲に溺れ、悪しき心に支配され霊獣となった。

わしは、化け物に変わった息子を抑えているだけじゃ。

お前に、それほどの覚悟が持てるのか?

全てを捨て、同じく化け物となっても饕餮を鎮める覚悟が」

「それは……」

 無理だ、と率直に雪蓉は思った。

そこまでの覚悟は持てない。

饕餮に対して、そこまでの思い入れもない。

 私は今まで、なんて浅はかに考えていたのだろうと思った。

饕餮を鎮める仙になりたいと思っていたこと自体が愚かだと恥ずかしくなった。

「ごめんなさい」

 口から出たのは謝罪の言葉だった。

仙になりたいだなんて、仙からしたら不快だったに違いない。

私は本当に、何も分かっていなかった。

「謝ることはない。それより、今後どうするのじゃ?」

「どうしよう。結婚なんてしたくないし、そもそもできないだろうし」

「まあ、お前の性格を知ったらな」

 仙は否定をせず、むしろ力強く肯定した。

「女手一人で生きていくには、伝手もお金もないし」

「あれの元に戻れば良かろう」