「自分から望んで戻ってきたって言ってたけど、もしそれが本当だとしたらそれこそ問題だよね」

「貴妃だよ、貴妃」

「それを自分から捨てるなんて、豚の肉を投げて出汁だけ飲むようなものだよ」

 それはもったいない、と雪蓉は思った。

そもそも豚の肉を出汁に使うことすらもったいない。

出汁にするなら骨で十分だろうと、馬鹿真面目に考えていた。そこじゃないだろ。

「皇帝陛下に見初められるなんて、さすが雪姐って思ったのにな」

「雪姐みたいに、いつか私たちもって言ってたのにね」

「帰ってきてくれたのは嬉しいけど……」

「雪姐これからどうするんだろ」

 雪蓉は、黙ったまま静かに踵を返した。

 どこに向かうでもなく、山道を歩く。

空を見上げると、綺麗な青空が広がっていた。

空気も清々しくて、気持ちいい。

なのにどうしてだろう、気持ちはどんどん落ち込んでいく。

 気が付いたら、川辺まで下っていた。

倒れている劉赫を発見した、あの川辺だ。

 大きな石に腰掛けて、小石を摘んで川に投げる。

ポチャンと音がして、あっという間に沈んでいった。

大きなため息を吐く。

(本当、どうしよう、これから……)