雪蓉の言葉に、仙と小さな女巫たちは、またかという呆れ顔を浮かべた。

「えー、もう諦めなよ」

「そうだよ、仙婆に任せればいいじゃない」

 小さな女巫たちの非難の声に耳を貸さず、雪蓉は至極真面目な顔でほかほかの料理に手をかざした。

 雪蓉の額から一粒の汗が噴き出る。

目は真剣そのもので、とても集中しているのがはた目からでも分かるが、一向に何の変化も起きない。

 息を止めて料理を見つめていた雪蓉だったが、苦しくなって手をかざすのを止め、息を吐き出した。

「はあ、はあ、……また駄目か」

 雪蓉が肩を落とし、がっくりと項垂れている横で、仙婆がいとも簡単に仙術を料理にかけた。

 ……そうなのである。

雪蓉は、仙術が使えない。

つまり、仙になっていなかったのである。

 すっかり仙になった気でいた雪蓉は、仙術がまったく使えないことに気が付き愕然とした。

 結局、仙術が使えたのは、劉赫を守るためにやった、あの一回だけ。

どうやら、あれは火事場の馬鹿力のようなもので、普段は発揮できないようだ。

 仙になってしまったと己を責め、嘆いていた劉赫はこのことを知らない。

教える気もないし、もはや立場が違いすぎて伝える機会もない。

(なんだかなぁ……これで良かったのかな?)