次の日、朝日と共に目が覚めた男は、痛む足をどうにか引きずって小屋の外に出て、用を足した。

昨日は起き上がることもできなかったから、治癒力は相当なものだと思う。

『まるで、人間じゃないみたい』

 男は女の言葉を思い出し、胸元の襟を押し潰すように握りしめた。

 その時、子供の笑い声が聞こえたので、慌てて木の陰に隠れる。

ここは、男子禁制だと女が言っていた。

姿を見せない方がいいだろうと思った。

見つからないように、そっと様子を窺う。

 四人の子供たちに囲まれて、真ん中に立っていたのは、昨日の女だ。

遠目から見ても、美しいのがよく分かる。

 整った横顔に、背筋の伸びた綺麗な立ち姿。

子供たちに向ける笑顔が、とても柔らかで輝いて見える。

 彼女たちが遠くへ歩いて行き、見えなくなると、ハッと我に返った。

 (……見惚れていた、彼女の美しさに。

馬鹿な、美しい女なら飽きるほど見ている。

あんなガサツで口の悪い女に、心を動かされるわけがない。

 ……しかし)

 続けて男は心の中で呟く。

(昨日食べたお粥は、驚くほど美味かった。

濃厚な豚足の旨味と、繊細な味付け。

丁寧に下処理をしなければ、あんなに爽やかで喉越しのいい味は出ない。

 あれを、あの女が作ったのか……)

そう考えると、男の胸がなぜかそわそわする。

 藁の上で、目を開けたまま気配を消すように横たわっていると、小屋の扉が開き、女が入って来た。

「もう起きていたの。おはよう。その顔色を見ると、よく眠れたみたいね」

 男は声を出さずに頷く。なぜだろう、女の顔がまともに見られない。

「朝食を持ってきたわ」

 そう言って女は、お盆を床に置いた。

白い湯気を立てる丼の中には、ふわふわの雲吞と鶏肉と野菜、それらに隠れるように半透明の米麺が入っている。

 まずはスープを飲むと、濃厚なのにあっさりとしていて、野菜の甘味が溶けて優しい味わいだった。

次に米麺を啜る。

喉越しがよく、いくらでも食べられそうだと思った。

さらに、雲吞を頬張ると、中から肉汁が出てきた。