「ほら、同じ後宮内にいるから、偶然会うことがあったのよ」

 後宮内とはいっても、とんでもなく広い。

しかも雪蓉の慌てた様子。

これは、俺に内緒でこっそり母に会いに行ったなと劉赫は確信した。

「まあ、いい。それより、饕餮はどうなった?」

「ああ、饕餮ならもう仙婆が山に連れて行ったわよ。結界を張って、起きたら仙術を施した料理を食べさせてまた眠らて……。

饕餮を荷台に乗せて運んだから、少し時間がかったらしいけど、無事に洞窟に戻ったって」

「それは一安心だな」

 劉赫の顔に安堵の笑みが浮かんだので、雪蓉も自然と笑顔になる。

 劉赫の笑った顔を見ると、雪蓉も嬉しくなる。

劉赫が生きていて良かったと心から思った。

「あと、今回と過去の元凶の人物についてなんだけど……」

 雪蓉は、麗影のことについても語り出した。

仙が推測した話だと、十四年前の凄惨な事件と、今回の驩兜や饕餮の解放、さらに衛兵や華延の仙術など、裏で操っていた人物は共通するだろうということ。

そして、そんなことができるのは仙だけであり、麗影の住む月麗宮から遺体が発見されたことを説明した。

「状況を考えて、犯人は麗影様で間違いないと思う。麗影様は仙だったのかしら?」

「仙になってしまったんだろうな。仙の強大な力に魅せられたのかもしれない」

「仙は、四凶などの霊獣や神霊を鎮める守り主ではないの? 仙って一体なんなの?」