(そうだ、俺は母に刺されたのだった……)

 そこまで恨まれているとは思わなかった。

確かに兄上を殺した神龍を体に宿している。

神龍と劉赫が同じに見えるのは仕方ないとはいえ……。

 劉赫の様子が明らかに暗くなっていることに気が付いた雪蓉は、慌てて劉赫が眠り込んでから分かった真実を告げる。

「母は、俺を助けた?」

 信じられないとでも言いたげに目を丸める劉赫に、雪蓉は静かに頷く。

「劉赫を守るために、咄嗟に左手を犠牲にしたから、もう左手は動かないらしいんだけど……」

 劉赫は、刺された自身の胸に手を当てる。

もう傷は塞がっているので軽傷だったようだ。

母親の左手の犠牲の上で、生き延びた命なのだと知る。

「そこまでして、どうして俺を守ったのだろう……」

 ボソリと呟いた劉赫の問いに、雪蓉は怒ったように言い返す。

「そんなの、劉赫が大事だからに決まっているじゃない! 華延様はずっと、劉赫の顔を見て怯えてしまったことに心を痛めていたのよ」

 突然、雪蓉が怒り出したことも、劉赫の母が自分を大事に思ってくれていたことも驚いたが、それよりもまず不可解なことがあった。

「どうして雪蓉がそのことを知っている」

「え? あ……」

 雪蓉はしまったという顔をした。

劉赫に内緒で太麗宮に行き、華延に劉赫の過去のことを聞いたと知ったら怒るかもしれない。

無断で人の過去を聞いたことに、後ろめたさを感じていた雪蓉は、しどろもどろに説明する。