劉赫が目覚めた時、雪蓉が側にいた。

皇帝の臥室で寝泊まりをするという破格の待遇を許可されたのには、今回の事態収束の立役者という功を労うとの意味もあるし、なにより雪蓉自身が劉赫の側にいることを望んだからである。

「おはよう。といっても、もう夕刻だけどね。あなたまた、三日三晩寝込んでいたのよ」

 劉赫の額に乗せていた布を取り、再び水に濡らして冷たくなったところで、額に乗せる。

 三日三晩、高熱で寝込んでいた劉赫の側で、雪蓉はこうして献身的に介抱していたのだ。

「生き……てる?」

 劉赫は信じられないといった顔で、辺りを見回した。

死んでもおかしくないほどの大怪我だったにも関わらず、体は意外にもすっきりしていた。

「侍医はとても驚いていたわよ。足も手も、本来ならもう動けなくなるほど深い傷だったのに、みるみるうちに治っていくって」

「そうか……」

 劉赫は自分のことなのに、他人事のような気がして、そっけなく返事をした。

 まだ、頭が回らない。

自分はなぜ三日三晩も寝ていたのだろう。

それに、ずっと夢を見ていた気がする。

どんな夢だったかは忘れてしまったけれど。

 起き上がろうとすると、雪蓉に咎められた。

「まだ傷は完全に塞がっていなんだから、動いては駄目よ」

 大人しく指示に従い、頭を巡らせる。

記憶を泥沼の奥から引っ張り出すように、少し時間をかけて思い出した。

思い出したくない記憶も引っ張り出してしまい、気持ちが沈んだ。