煉鵬は、大きくため息を吐いたあと、覚悟を決めたように言った。

『……分かった』

 煉鵬の返答のすぐあとに、ドンっという大きな地鳴りと共に、劉赫は穴に吸い込まれるように落ちていった。

 落ちた穴の先で見たものは、変わり果てた麗影の姿だった。

 小動物ように可愛らしく愛らしい少女は、真っ赤な紅をひき、濃い粉化粧で瞳を覆っていた。

美しいが、恐ろしい。

嫉妬と憎しみで顔を歪めていた。

『あー、憎い。おー、憎い。

私が手に入れるはずだった幸せを、あの女はいとも簡単にやすやすと奪っていった。

私の元に生まれるはずだった美しく利発な子を四人も産んで、のうのうと生きておるわ。

あー、憎い。おー、憎い。

身も心も捧げた煉鵬まで憎い。

死ねばいい。親子共々、頭を踏みつぶして殺してやりたい』

 麗影は自身の親指を噛むと、赤い血が垂れてきた。

 部屋を埋め尽くす憎悪の感情に飲み込まれ、劉赫は吐きそうになった。

 すると、部屋の隅の影がゆらゆらを動きだし、影は次第に大きくなり、人の形となっていった。

『何者じゃ!』

 麗影が叫ぶ。

人の形となった影は、黒づくめの男になっていた。

腰まで届く絹糸のように美しい銀髪が、暗闇の中に怪しげに光る。

『お前の憎悪に惹かれてやってきた。そんなに憎いならお前の望み、叶えてやっても良いぞ』

『誰だ、貴様は……。私が誰か分かって侵入してきたのか?』

『俺は、仙を統べる者。お前を仙にしてやろう』

 そう言って銀髪の男は、麗影の頭を片手で掴んだ。

『何をす……』

 麗影が叫んで逃げようとした瞬間、男の手に力が入り、麗影の頭はぐしゃりと潰れた。

 血しぶきと肉片が飛び散る。銀髪の男は満足そうに笑った。