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混乱が治まり、日常を取り戻そうとする中、後宮内で麗影様と思われる遺体が発見された。

 麗影様と思われると表現したのは、顔の上半分がなかったからだ。

頭のないその遺体は、手足は棒きれのように細く、木乃伊(みいら)のように浅黒かった。

 見つかった場所は、後宮の奥地にある月麗宮。麗影様の寝所に横たわっていた。

麗影様の姿はなく、代わりに頭のない死体は、麗影様のお召し物を着ていて、麗影様が大切にしていた首飾りがかけられていた。

 このことから、遺体は麗影様のものであると判断された。

元から妖女のように歳を取らない不気味な存在ではあった。

 衛兵たちが口にした赤い実も、麗影様が直々に持ってきたものだった。

やんごとなき身分の麗影様から勧められ、断ることなどできようはずがない。

 こうして、十四年前から始まる忌まわしい出来事に終止符が打たれた。

黒幕の死という形を持って。