しばらくすると、女が温かな湯気をたてる小さな土鍋を、お盆に乗せて持ってきた。

土鍋には、トロトロに煮込んだ米と野菜が入っていた。

米がきらきらと輝き、緑の茎や葉が彩りを添えている。

(美味そうだな)

 何年ぶりだろう、男の口の中に唾液が広がった。

 女は土鍋からお椀に少量よそい、ふうふうと息を吹きかける。

 そして、レンゲですくったお粥を男の口に運んだ。

口を開けると、野菜のいい香りがして、舌の上に温かな粥が乗せられた。

 ゆっくりと咀嚼する。

口の中にふわっと奥深い味わいが広がる。

絶妙な塩加減と、とろける柔らかさ。男は思わず、目を見張った。

「……味がする」

「そりゃそうでしょう。残った豚足で出汁をとったの。しっかり下処理しているから、臭みもないでしょ」

 男は、コクリと頷き、口の中で十分に味わったお粥を飲み込む。

「もっとくれ」

「はいはい、熱いからゆっくりね」

 男は夢中になって全てを平らげると、急激に眠気が襲ってきた。

(目が虚ろになっているのが自分でも分かる。瞼がとても重い)

そんな男を見て、女は安心したように目を細めた。

「じゃあ、ゆっくり寝るのよ。また明日」

 男は返事もせずに、睡魔に引っ張られるように眠りに落ちた。

腹が温かく、気持ちが満たされている。

 また明日……。夢の中で、男は女に応えた。