「それよりも、この(おなご)の方が重症じゃぞ」

 仙は、劉赫の近くで倒れている華延を指さして言った。

 雪蓉は、劉赫が刺されたことで頭がいっぱいになり、華延にまで気が回らなかった。

 見ると、倒れている華延の体から血が出ている。

「え⁉ どうして⁉」

 刺したのは華延であって、華延には誰も危害を与えていない。

うつ伏せになって倒れている華延を仰向けにさせると、手の平から大量に出血していた。

 左手の真ん中が、何かで突き刺したように貫通している。

怪我の様子からして、剣で突き刺した痕だった。

 仙も屈みこんで左手を見つめる。

「これは、神経も切断されているな。もう二度と左手は動かせないだろう」

 雪蓉は黙り込んだ。

劉赫を殺そうとした華延に同情することは手放しではできず、複雑な思いが駆け巡ったからだ。

「それに、強力な仙術がかけられておる」

 雪蓉は驚き、仙を見た。

仙は華延の頭を起こし、首の後ろに素早い動きで手刀を与えた。

すると、華延の口からポロリと赤い実が零れ落ちた。

 華延も仙術に冒されていたと驚くと同時に、こんな簡単に相手に与える打撃が少なく赤い実を吐き出させることができるのかと目を見張った。

 平低鍋で思いっきり殴られた衛兵の皆さん、すみませんでしたと心の中で謝る。

おそらく起きた時、頭に大きなこぶができているだろう。