「しっかりしなさいよ! あんたが諦めたら、本当に……」

 その先は言葉にできなかった。

言葉にしてしまったら、本当にそうなってしまう気がしたからだ。

 どうして華延は劉赫を刺したのだろう。

四凶を解き放ち、劉赫の身を危険にし、衛兵に仙術を用い操った黒幕の正体は、華延だったのだろうか。

そういえば、仙術で操られた衛兵は、後宮の警備にあたる右玉鈐衛の者たちだった。

 華延が黒幕なら、なぜ彼らだったのか謎が解ける。

「雪蓉、死ぬ前に伝えたいことがあるんだ」

 劉赫は薄れそうになる意識の中で言った。

劉赫はだいぶ弱っていた。

体も心も、もう変な意地を張る気力もないくらい弱りきっていた。

「死ぬとか、縁起でもないこと言わないで!」

 雪蓉も動揺していた。

もしも劉赫が死んでしまったら、それは自分の落ち度である。

側にいながら、みすみす刺されるところを見ていたのである。

悔やんでも、悔やみきれない。

「雪蓉、好きだ」

 雪蓉は、劉赫の想像通りに驚き、固まった。

その様子を見て、劉赫は満足そうに笑みを浮かべた。

「その顔が……見たかったんだ」

「なっ! こんな時に冗談やめてよ!」

「冗談なんかじゃない。料理人にはせず、後宮に入れたのは、雪蓉のことが好きだったからだ」