「いい……いいわねえ~っ」
「……梨実さん?」
急に瞳をキラキラさせ出したお母さんに、澪さんは怪訝そうな顔をする。
「わたし恋バナ大っすきなのよっ。でも海雨も真紅ちゃんも今までそういう話全然なかったから淋しかったの」
乙女のように頬を染めるお母さん。お母さんのこの性格を知っているあたしはため息をついた。
「悪かったね。でもお母さん、真紅はおうちの関係でちょっと大変な時期なんだから、真紅にも黎さんにもヘンなこと言わないでよ?」
「ああ、そう言えばお母さんのご実家に入ったんだっけ? そういうのあるのねえ。で、海雨は? せめて好きな人とかいないの?」
「あたしはそんなことより高校卒業のが目標なのっ」
それにこんな身体じゃ……気落ちしそうになったけれど、そこは母。すかさずフォローを入れてくれる。
「そうね。学校も大事だわ。でも海雨、本当に好きな人が出来たときは、お母さんやお父さんに遠慮しないでね?」
「―――」
にっこり笑みを見せてくれるお母さんに、あたしは唇を噛んだ。
「じゃあ、俺が海雨さんに交際を申し込んでも反対はされないですか?」
「………………………………………」
「あら」
澪さんがヘンなことを言った。
意味がわからず黙って瞬くあたしと、口元に手を当てるお母さん。澪さんは優しく笑った。
「海雨ちゃん、俺と付き合いませんか?」