「黎さんにちょっと嫉妬してるのはあります。あたしの中も今アンバランスなんですけど、でも、よかったーって、思ってるのが一番強いかもです」
「……梨実さんは、」
ふと、澪さんが目元を和ませた。
「いい友達を持ったんだね」
「――、はいっ。澪さんも、ですね」
「俺?」
「黎さん。色々言っても仲良しじゃないですか」
「そうかなー?」
澪さんと話しているうちに、お母さんがやってきた。
「あら、澪くんこんにちは」
着替えの詰まったカバンを持ったお母さんに譲るように、澪さんが椅子を立った。
「こんにちは。いつもありがとうございます」
「こちらこそ。お世話になってます。お話し相手してくれたのね」
「うん。澪さんに勉強も教えてもらってる」
「本当に、ありがとうね。あ、真紅ちゃんから今日こっち来るってメッセージあったんだけど、まだ来てないのね」
「真紅さんなら黎が連れて行っちゃいました」
「……黎くん? なんで?」
しまった、と背筋が冷えた。真紅と黎さんが付き合っていること、お母さんには言っていない。
あたしが止める前に、澪さんが言ってしまった。
「黎、真紅さんと付き合ってますから」
「み、澪さんっ」
「あいつらの場合、こうやって周りから固めるのも手だから」
「そ、そうではなくて~」
慌てるあたしに、瞳をギラッとさせているお母さんが見えた。