「俺? 俺はむしろパッと見じゃ男か女かわからないから、声かけてくる奴とかいないから必要ないって」

「澪さん、自虐の方向が凄まじいです……」

澪さんだってキレーな見た目だ。中性的、という表現がついてまわるのが哀しいかな、だけど。

ふと、訊いてみた。

「……澪さん、本当に真紅のことキライなんですか?」

「急にどうしたの?」

「あたしにとって真紅は一番の親友ですから、傷付いてほしくないです。澪さんも、病院が長いあたしの勉強見てくれたり、優しくしてくれる大事な人です。……お互いの立場とかもあるみたいですから仲良くしてほしい……とまでは言いませんけど、………」

あたしの言葉が続かなくなると、澪さんは手を組んで前のめりに身を乗り出した。

「俺がお嬢さんに辛く当たるの、見ていてきつい?」

問われて、あたしは視線を落とした。

澪さんが真紅に厳しくしている理由を、あたしは知っている。

真紅が、あたしに総てを話したと知った澪さんから伝えられた。だ

からあたしは、真紅をかばいこそすれ澪さんを糾弾してはこなかった。

「はい……」

素直に肯くと、澪さんは軽く息を吐いた。

「前にも言ったけど、お嬢さんが望んでいるのはそれこそいばらの道だよ。正統後継者として黒の若君がいるところへ、急に現れた始祖の転生。小路の中枢の人間はお嬢さんが生まれた時から知っていたようだけど、ほとんど秘されていた存在だ。慣習的に始祖の転生は当主になってきた。けれどお嬢さんの力は――今はまだ、黒の若君には遠く及ばない。いや、鬼の力を持つ若君に敵う奴なんているかもわからないくらい、黒の若君は別格だ。でも、お嬢さんを当主に、って話はもう出ている。そんな重要な位置にいるお嬢さんが、伴侶に黎を望んだって反対を喰らうだけだ。現状、黎は立場があやふやでもあるしね。立ち向かって行く壁は、黎とお嬢さんにはあり過ぎるくらいだ。俺程度の嫌がらせで投げ出すようだったら、お嬢さんに黎との未来はない」

「………」