肩に額を押し当てたまま、黎は強く抱きしめて来た。

どういう意味なのだろう。覆らないことに文句を言ったって、黎を困らせるだけだ。

……今の黎は、少し傷付いているように見えた。

黎の背中に腕を廻して、私の方からも抱き付いた。

「逢えなくて淋しい分、今いっぱい見ておくとかじゃ、ダメ? 私も淋しくなっちゃう分、黎のこと見たい」

ぴくりと、黎の頭が動いた。

ゆっくりと、黎の頭が持ちあがる。

「……本当?」

「え……と、じゃあ、実習終わったらもっと――」

「淋しいって、思ってくれる?」

問われて、頭を上下させた。

「淋しいよ? でも、黎の邪魔はしたくないし――」

「終わったらもっと……何していいの?」

「え? た、たくさん逢うとか?」

「うん。そうしたい。ほかには?」

「ほか? ええ? な、何かな……」

重ねて問われて、困ってしまった。私が黎のために出来ることは数少ない。

「ごめんごめん、少し拗ねてみただけ」

「拗ね……?」

「俺も淋しいから、もっと充電させて?」

「………っ、ど、どうぞ……」

黎はどれだけ私に触れていたいのだと思わせるほど時間を奪われて、海雨の病室に戻れたのは急いで帰らないと門限だという時間だった。でも、私も同じだけ黎と過ごしたかったから文句は言えなかった。

……淋しさのパワーすごい。