「………」

申し訳なさ過ぎる……。

言葉を失くしていると、海雨がカラッと笑った。

「そんなんでも、傍目には合わなく見えても、二人って一番近い友達なんだよね。黎さんの場合は、澪さんの発破剤(はっぱざい)にもなってるみたいだし。澪さんが黎さんを嫌うことがなかったように、黎さんが澪さんを嫌うことはないと思うよ」

「………うん」

たぶん私は、これ以上黎から奪いたくないと感じている。

自分といるために黎が捨てた、たくさんのもの。

まだ黎の手の中にある、友達の存在までは奪えない。

「梨実? 真紅が来てるって聞いたんだけど」

「うひゃうっ!」

通路に向けて引いたカーテンの向こうからかかった声に、肩が大きく跳ねた。た、タイムリー過ぎっ!

「ま、真紅……面白すぎ……っ」

真紅の驚きように、隣の海雨はお腹を抱えて笑っている。

「開けていいか?」

「あっ、う、うんっ」

言われて、慌てて心臓を落ち着かせようとする。

カーテンを開けた黎は、白衣を纏っていた。

「真紅、少し話あるんだけど、いいか?」

「私? うん」

「来週から実習入るから、しばらく行けなくなりそうなんだ」