そうなれば、黒ちゃんと対立することになる。
黒ちゃんは正統後継者という立場ながら、ずっと当主になることを蹴っている。
理由は、『白を嫁にするから』。
…………。
対外的には男として知られている白ちゃんのことを堂々と言うから、その割は白ちゃんも喰っているようだ。
それでも黒ちゃんを跳ねつけない白ちゃん。
……実際ところ、黒ちゃんのことをどう思っているのかはナゾだ。「幼馴染の腐れ縁だ」とは聞いているけど。
「真紅真紅」
思考に落ちてしまった私の顔の前で、海雨が手を振った。
「あ、うん?」
「黎さんと澪さんが喧嘩してるのいつものことだから、その辺は気にしなくていいと思うよ?」
「……そうなの?」
黎と澪さんが喧嘩ばかり? そりゃあ、澪さんは最初から私に対してきつかったから、黎がいる場でも、直接的なことこそ言わないけどかなり空気は悪い。
「そ。黎さんが大学、主席入学したの知ってる?」
「そうなの⁉ 国立の医学部でしょっ?」
思わず声が大きくなってしまった。幸い病室は、面会時間で出ているからか、ほかに人はいなかった。
黎が医学部に在籍するのは、小埜家の方針としか聞いていない。やりたいことでもなかったから、適当にやっているとか言っていた。
「うん。黎さん、医者の勉強とかは基本的にやる気ないっぽいけど、優秀なんだよね。反対に澪さんは本気で頑張ってもなかなか結果が伴わないタイプっていうか。黎さんは黎さんで、澪さんのトラウマスイッチ押しちゃってるんだよ」