黙ってしまった私の頭に、ママが手を置く。
「真紅ちゃんに、ここを出てけ、なんて言っているわけじゃないわ。私こそ、あとはずっと真紅ちゃんと紅緒のために生きるって決めてるのよ。真紅ちゃんが一人前に成長しても、離れて暮らすなんて考えられないわ。真紅ちゃんの生き方は――真紅ちゃんはもう、自分で決めていいほどになっているって言いたいのよね。紅緒は」
「も、申し訳ありません姉様っ。わたくしの言葉足らずで――」
「紅緒。わざとでしょ、今の」
慌てる紅緒様だけど、ママに言われて押し黙った。反論がないということは、反論出来ないということだろう。
「………」
ママは私の腕の中の紅姫を見た。その視線を受けて、紅姫は三毛猫の姿に戻った。首を伸ばして私の頬に額をこすりつけ、慰めるような行動をした。
――考えた。今はまだ、紅緒様の許で修行中、という立場の自分。でもいつか、一人前にならなければいけない。
総てを、自分で決定する大人に。――そして私は、始祖の転生という業(ごう)を背負ってもいる。
ママはにっこり笑った。
「真紅ちゃんはもう、自分のことは自分で決めていいのよ、って紅緒は言いたいのよ。紅緒はひねくれてるから、素直に言えないの」
「姉様っ!」
「紅緒?」
ママに首を傾げて見られ、紅緒様は息を詰まらせた。
「っ、……真紅。姉様の言うようです。お前の式は、お前が決めなさい」
「―――」
自分で、決める。
この子を、自分のものとするか。
見上げてくる眼差しは、終わりの先でも私を見つけてくれた。
「――はい」