そっと抱き上げると、紅姫は慌てたように足をばたつかせた。すぐに懐へ抱き込む。

「紅が来てくれた上にお話出来るなんて夢みたいっ。紅、守護霊って言ったけど、誰かの守護霊になったの?」

《守護霊はあくまで建前です。紅、巫女様の式になりとうございます》

「式?」

《巫女様、まだ式をお持ちでないのですよね? 紅は化け猫と呼ばれることもある、変化の妖異です。この姿、いかようにも変えること出来ます。徒人(ただびと)の目に触れることも出来ますゆえ》

「そうなのっ? えーと……」

そんなことを言われて、見てみたい姿は一人しかない。

「黎になることもできる?」

《小埜黎様――。巫女様の恋人様ですよね。出来ますよ。では――変化・小埜、黎》

ポンッ、と紅姫の身体が刹那煙に包まれた。次の瞬間そこにいたのは――

「か……可愛い~~~~っ。小さい黎だ~~~~っ」

私は思わずむぎゅうっと抱きしめていた。紅姫本体よりは一回りは大きくなったものの、変化した大きさは子どものものだった。

「真紅ちゃん? もう起きて――」

襖を開けママが、布団の上で正座して小さな子どもを抱きしめている私を見て固まった。

「ま――ママっ! 見て見て! 紅が来てくれたの! しかも変化出来るんだって! 今黎になってもらったんだけど、可愛くないっ⁉ 黎のちっちゃな頃ってこんな感じだったのかなっ?」

興奮している私は、ママが見鬼ではないとか紅がなんだか知らないとか、そういう配慮が一切抜け落ちていた。

「姉様? 真紅、何を騒いでいるのです」

ママの後ろから、紅緒様も顔をのぞかせた。

私が抱いているものを見て、目を細めた。そして、すんっと紅の額に刀の切っ先を当てた。