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自室で目を覚ますと、ふっと枕元に手をやった。そこに、摑むべき何かがあった気がする……
「ん?」
もふもふする。
「なんか置いたっけ……?」
寝ぼけまなこだった私は、もう片方の手で目をこすって、寝返りを打った。今度はうつ伏せの格好で、枕元――未だにもふもふを触っている手の方を見た。
えーと、るうちゃんはこんな手触りじゃなかったはず……―――
三毛猫がいた。
《お起きですか? 巫女様》
「………」
もう一回寝るか。
そう決めて手を引っ込めようとすると、今度はふにふにした感触が私の手に触れてそこへ留めた。
《巫女様は寝起きがお悪いようですね。この紅(べに)、いっそ巫女様とお布団にくるまりたいところですが、巫女様、今日も学び舎(や)へ行かれませんと》
「………」
猫に叱られた。そして私の手を押さえたのは肉球だった。
だんだん頭がはっきりしてきた私は、布団の上に正座した。おまけに、ともう一回目をこすった。
……やはり三毛猫がいた。
「……あなた……」
《影小路の巫女様より名前を賜(たまわ)りましたゆえ、守護霊、と相成ることが叶いました。この紅、巫女様のお傍に置いていただきたく参上致しました》
「べに……ひめ?」
夢の中で、私は三毛猫をそう呼ぼうとした。でも、音にはならなくて。
べにひめ――紅姫。
私が手を差し出すと、紅姫がその手に顔をこすりつけた。
《巫女様。もっと早く参上致すべきでした。至らぬ紅をおゆるしください》
「紅……虎ちゃんとこたちゃんのお母さん、だよね?」
《はい。紅は影小路と月御門と、巫女様をお繋ぎする役目を負っているはずでした。ですが紅の参上が遅く、巫女様には大変なご苦労とご心痛をおかけ致してしまいました》
申し訳なさそうに震える紅姫の声。「ううん」と首を横に振った。
「紅、ありがとう。私を見つけてくれたんだね」
自室で目を覚ますと、ふっと枕元に手をやった。そこに、摑むべき何かがあった気がする……
「ん?」
もふもふする。
「なんか置いたっけ……?」
寝ぼけまなこだった私は、もう片方の手で目をこすって、寝返りを打った。今度はうつ伏せの格好で、枕元――未だにもふもふを触っている手の方を見た。
えーと、るうちゃんはこんな手触りじゃなかったはず……―――
三毛猫がいた。
《お起きですか? 巫女様》
「………」
もう一回寝るか。
そう決めて手を引っ込めようとすると、今度はふにふにした感触が私の手に触れてそこへ留めた。
《巫女様は寝起きがお悪いようですね。この紅(べに)、いっそ巫女様とお布団にくるまりたいところですが、巫女様、今日も学び舎(や)へ行かれませんと》
「………」
猫に叱られた。そして私の手を押さえたのは肉球だった。
だんだん頭がはっきりしてきた私は、布団の上に正座した。おまけに、ともう一回目をこすった。
……やはり三毛猫がいた。
「……あなた……」
《影小路の巫女様より名前を賜(たまわ)りましたゆえ、守護霊、と相成ることが叶いました。この紅、巫女様のお傍に置いていただきたく参上致しました》
「べに……ひめ?」
夢の中で、私は三毛猫をそう呼ぼうとした。でも、音にはならなくて。
べにひめ――紅姫。
私が手を差し出すと、紅姫がその手に顔をこすりつけた。
《巫女様。もっと早く参上致すべきでした。至らぬ紅をおゆるしください》
「紅……虎ちゃんとこたちゃんのお母さん、だよね?」
《はい。紅は影小路と月御門と、巫女様をお繋ぎする役目を負っているはずでした。ですが紅の参上が遅く、巫女様には大変なご苦労とご心痛をおかけ致してしまいました》
申し訳なさそうに震える紅姫の声。「ううん」と首を横に振った。
「紅、ありがとう。私を見つけてくれたんだね」