「……黒藤は白桜を大すきだけど、それとは別のところでも大事にしてる。黒藤の命を拾ったのが白桜だって、黒藤が言ってたわ」
「……命を?」
私が返すと、百合緋ちゃんは微苦笑した。
「陰陽師の世界を、わたしは理解し切れてないからわかったようなことも言えないけど、黒藤の核は白桜なのよね」
「………」
核。自分の中心。
「でも、白桜の核は黒藤じゃない。……黒藤はそれに気づいてる」
「………核」
「真紅ちゃんの核は、あの人かしら?」
百合緋ちゃんがにやりと笑った。
「え? れ――黎は、その、なんとゆうか……」
慌てて言うと、百合緋ちゃんはくすくす笑い出す。
「やっぱり黎明の方なのね。学校で見てると、十字架の弟の方かもって勘ぐっちゃったけど」
「えっ、それって、付き合ってるように見えるとか、そういう意味?」
「そういう意味よ」
「困るっ。私は黎だけだからっ」
「うん、そうみたいね。だから、十字架の弟と仲いい理由、考えておいた方がいいわよ?」
「な、なんで?」
「そろそろ、女子の中でも十字架の弟を気にしてる子たちが動く頃よ。転校してきた時期が一緒で、ほかの時間も一緒にいるってなれば、『彼氏の弟だから』だけじゃ通じなくなるわよ? 少なくとも、どちらかは好意があると思われるわ。十字架の弟は真紅ちゃんを主家の主として見てるから、護衛の意味でしょうけど……そんなの、学校では通用しないでしょ?」
「………」
またかー、と項垂れた。前の学校でも、架くんと仲がいいとシメられたというのに。その折は、架くんの兄の黎と付き合っているから、で乗り切れたけど……。
「どうして女の子ってそういう感じになるんだろうね……」
「遠い目をするのはまだ早いわよー?」
おーい、と百合緋ちゃんが呼びかける。