「神の末席に名を連ねる。霊獣(れいじゅう)と呼ばれる場合もあるけど、こいつは神獣と呼ぶべき存在だ。涙雨、だから白は大丈夫なんだな?」
『ゆえ。母猫は、現世に生きたことでほぼ神気(しんき)を失うておる。じゃが、生まれたばかりの仔猫は、うまく保護すれば神獣として格をあげるじゃろうて。それには、陰陽師として出来ている若君と白のひ――若君の傍に在るのがよかろう。その猫たちは、ただの動物ではくくれぬ生き物じゃ』
……るうちゃんは口が軽いのか、また『白の姫君』って言いかけたよ。白ちゃんに殴られコースまっしぐらだよ。
「私じゃダメなの?」
私が問うと、るうちゃんはゆうるり首を横に振った。
『真紅嬢はまだ、陰陽師として不安定、神獣の面倒まで見切れんはずじゃ。仔猫の神獣とて、霊力がある。修行中の真紅嬢がそれにあてられては大変じゃ』
……残念ながら、この仔猫は私の傍には置いておけないようだ。
そっと、仔猫を舐める母猫の頭に手をかざした。感じる、波動。
「じゃあ……ママ、紅緒様、仔猫たちはもう少し育ったら、黒ちゃんと白ちゃんに預けていいかな? お母さん猫の方は、元気になるまでは私が面倒を見たい」
ママと紅緒様は目を合わせてから、肯いた。
「いいわよ。今まで動物を飼う余裕なんてなかったものね」
「生命に触れるのはよいことです。ですが、白桜が来づらくは――
「毎日来ますっ! 門の外から眺めるだけでも構いません!」
白ちゃんが宣言すると、百合緋ちゃんの顔色が一瞬悪くなった。そしてぼそり。
「白桜が残念な変態なこと言った……」
否定出来ない……。さっきは黒ちゃんに否定してよと思ったけど、いざ自分が巻き込まれればなかなか難しかった。
「黒ちゃんも来る?」
百合緋ちゃんを慰めようもないので、話をすり替えることにした。
「そうだなー。仔猫って一日でおっきくなっちゃうもんな。時間見て来るよ」
なんだかさっきから、白ちゃんよりも黒ちゃんの方がまともなことを言っているように聞こえるのはなんでだろう。いつも一番ぶっ飛んでる人なのに。
「黎たちは知ってるのか?」