「え、今、黒ちゃんも言った?」

こたろう、と言ったのは、黒ちゃんの声だった。

「あ。……なんでだ?」

首を傾げる黒ちゃん。私は二度瞬いた。自分で意識せずに言ったの?

「白ちゃんも、随分すぐに難しい名前考えたね」

「いや、なんか口をついたというか……」

白ちゃんも、自身の言葉に不思議そうな顔をしている。

ふじとらって、これまた強そうなお名前を。

「……真紅、仔猫二匹を、黒藤と白桜にそれぞれ任せてみませんか?」

そう言ったのは、紅緒様だった。

「えっ、でも白ちゃんって――」

「たぶん、仔猫の方は大丈夫ですよ。黒藤、涙雨は帰ってきていますね?」

「……お見通し過ぎて怖いですよ、母上」

黒ちゃんはため息をつきつつ、左掌を差し出した。紫色の小鳥がぽんっと現れた。

『紅緒嬢よ、涙雨に尾行をつけるのはおやめくだされ』

「わたくしの式は別に探しに出しただけです。たまたま行き先が同じだっただけでしょう」

紫色の小鳥が文句をつけるけど、紅緒様はどこ吹く風で気にしない。

『真紅嬢よ、その三毛猫の仔は、若君と白の姫君に任された方がよろしいかと涙雨も思う。神獣(しんじゅう)の末裔(まつえい)の三毛猫ゆえ』

「しんじゅう……?」

私が呟くと、黒ちゃんが応じた。