「母様……」
あ、白ちゃんの身長が低くなった。ショックだったらしい。
「母上、白を落ち込ませないでください」
「訊いて来たのは白桜でしょう。先に落ち込ませたのはお前ですし」
紅緒様は無傷で言い返す。だが、紅緒様の上を行く存在があった。
「鬼神を連れて来たのは紅緒もでしょう。白桃ちゃんに何が言えると思ってるの」
「………」
「………」
何故か、ついでに黒ちゃんまで黙らせたママだった。
「ちょうど二匹いるし、黒ちゃんと白ちゃんのところへ行ければ仔猫たちも一番だったかもしれないけど、アレルギーがあるんじゃ無理ねえ。あ、真紅ちゃん。仔猫の名前くらい、白ちゃんにつけてもらったら?」
ママの提案に、私はあっと声をもらした。
「そうだね。白ちゃん、名前つけてもらえないかな?」
「!」
ぴんっと、白ちゃんの背筋が伸びた。
「い、いいのか?」
「白ちゃん、猫すきなんでしょ?」
「可愛いっ!」
どんな肯定の仕方だ。いつもの冷静さをなくすくらいすきなようで、思わず苦笑がもれた。
「えっとね、本当に綺麗に真っ白な仔と真っ黒な仔なんだけど――
「藤虎(ふじとら)」
「小太郎(こたろう)」
「……ん?」
私の言葉が終わる前に、二人分の声が続けて聞こえた。