そうなんだ。白ちゃんは、庵の中に足を踏み入れただけでくしゃみと涙が止まらなくなるほどの猫アレルギーだった。

今も、縁側の外から悔しそうに私と百合緋ちゃんを見ている。

「白ちゃんにそんな弱点があったなんて……」

「わたしも知らなかったわ……」

どうやらそのことは黒ちゃん以外知らなかったようで、百合緋ちゃんも驚いている。

「遠くから眺めてるだけでも構わない! 結蓮たちなら受け容れてくれるから!」

「お前をそんな残念な変態みたいに出来るか。絶対ダメ」

「残念な変態に言われたくない!」

「否定はしない」

……とんでもないやり取りを他人ん家でさらっとやらないでほしい。

最初の白ちゃんの言い方もちょっとアレだけど、好きな子になんて言い方を出来るんだ、この従兄は……。

そして否定してほしい。

私は薄ら対応に困った。猫を連れ込んでしまった身の上として。

「白がちびの頃迷い込んで来た猫に触って全身に発疹(ほっしん)が出来たとき、大変だったの忘れたわけじゃねえよな?」

「うっ……」

黒ちゃんの鋭い瞳に、白ちゃんは唸って黙り込んだ。

「黒ちゃん、何かあったの?」

全身に発疹とは、相当なアレルギー体質のようだ。それで猫が大すきって……哀しいかな。

「白里(しろさと)じいさん――白の祖父が、どこの呪詛(じゅそ)かって騒いで一族総出で祈祷(きとう)大会だよ。いつも傍にいた俺まで疑われるし。結局猫のアレルギーだってわかって落ち着いたけど、以来御門の家では白に猫は近づけられない暗黙の了解が出来た」

「………」

い、一族総出って……。大派閥の御門の家でそんなことがあったなんて……。