「わ~っ、仔猫って初めて見るわ~っ」

「私も。ちゃんと面倒見るお母さんでよかったね」

百合緋ちゃんたちが到着した頃には、三毛猫は二匹の仔猫を産んでいた。

戸棚の前に膝をついた私と百合緋ちゃんは、並んで猫を覗き込む。

今にも死にそうな息づかいだった三毛猫だが、今は落ち着いて、仔猫を舐めている。

「誰に教えられでもなく赤ちゃんのお世話出来るなんて、すごいことなんだね」

「ほんとね。でも、お母さん猫、美人さんね。仔猫たちも美形になる気がするわ」

「お母さん、顔立ちも毛並みも綺麗だよね。どっかで飼われてたのかな?」

「飼い猫なら、家で出産するんじゃない?」

「普通はそうだよね……。一応、飼い猫かどうか、探した方がいいかな?」

「それなら、涙雨が請け負おう」

言ったのは、黒ちゃんだった。

「るうちゃんが?」

黒ちゃんの方を振り返ると、ぽんっと、空中に紫色の小鳥が現れた。

黒ちゃんの三番目の式で、鳥の姿の妖異の涙雨ちゃんだ。

私には紫色に見えるけど、一般人には黒い小鳥にしか見えないらしい。

るうちゃんは今、黒ちゃんの命で私の傍についていてくれる。

修行中な身であることと、まだ私に式がいないから、護衛のためだと。

「涙雨、あの親猫の気配がある家を見つけて来てくれるか?」

『承知した。今いっとき、時間をいただくぞ』

黒ちゃんに応えて、紫色の小鳥は縁側から出て行った。

「その三毛猫が飼い猫なら、その家にはそいつのいた名残があるはずだ。涙雨が見つけてくれる。けど、見つからなかったら……どうする? 真紅が飼い主になるか? 白は無理だ――

「俺が飼いたい!」

「部屋にも入れない猫アレルギーなんだろ、駄目。白の健康を害する」

普段は白ちゃんにダダ甘い黒ちゃんが、厳しい声でぴしゃりと言った。