「白、急いだって生まれてるのかわかんねえよ?」
「だ、ね、こ!」
「うん、言いたいことはわかったから、とりあえず落ち着け」
上気した頬で意味不明の言葉を発する白に制止をかける。
一緒に歩いている百合姫は、白の興奮に少し呆れた様子だ。
「あー、白の猫好きは相変わらずか……。呼ばない方がよかったかな?」
独白する。
母上から、真紅が産気づいた猫を拾って来たから、お前も来たらどうか? と連絡があった。
猫とのことで、ちびの頃から猫好きな白に声をかけてみたら案の定乗って来た。
……だが、乗り過ぎだ。
今にも駆け出しそうな白を一応片手で押さえているが、ものすっごい力で進もうとしているので、俺は歩く必要もなくただ引きずられている格好だ。
これが御門の当主とは……ちたあカッコがつかねえよな。
「白桜って猫、好きだったのね」
「あ、百合姫は知らないか?」
張り切って俺を引っ張る白を見て、ぽつりとした言葉に俺が反応した。
「あんたは知ってるってわけね……。でも、なら飼ってもいいのに」
「それがなー無理なんだよなー」
白に引きずられているから、なんとなく俺の声はやけに間延びしている。
「なんで?」
「すぐわかるよ」
意味ありげな返事をしたけど、母上たちの家に足を踏み入れた途端、百合姫もそれに気づいたようだ。