扉を開けたのは黎だった。瞬時に私の瞳が煌めく。

「兄貴。今来たの?」

「今日は小埜の家の用事済ませてた。――っと、真紅?」

「黎! こっち来て!」

慌てて黎の腕を摑んで病室の外へ引きずり出した。

「……真紅ちゃん?」

「あれ? 今の黎さんだよね? なんかいつもと違ってなかった?」

私の突然の行動に、呆気に取られた声を背中に聞きながら。

「真紅? どうし――
「瞳! 銀色のまんまっ」

廊下の隅に引きずり込んで、小さな声で叫ぶ。黎は「あ」と声をあげた。

「カラコン入れてないでしょ。それでここまで来ちゃったの?」

「あー、忘れてた。ずっと家にいたから」

黎の瞳は、純粋な吸血鬼のお母様譲りで、両方とも銀色をしている。

普段は、悪目立ちするから、と黒いカラコンを入れて隠しているのだけど……。

「危ないよ。一般的な日本人にはない色なんだから」

「ん。助かった。ありがとな」

と、軽く身を屈めてキスをしてきた。

予想外の行動に真赤になる私を横目に、黎は満足げだった。