「んー……ちょっとお社、もう一階見てくる。無炎さんが、『お前の感覚を優先しろ』って言ってるから」

無炎さんは、『真紅が感じた異変は自分には確認出来なかった』。『だが、真紅は理屈より感覚の方が優れている』、そう書いて来た。

「真紅ちゃんが行くなら俺も行きます」

架くんがシャッとカーテンを開けて姿を見せた。

「寝てなさい!」

すぐさま私が怒鳴ってカーテンを閉め返すけど、架くんは手を離さなかった。

「俺の役目は俺が果たすだけだよ。せめて真紅ちゃんに式が出来るまでは、俺が護衛する」

「…………」

半眼で架くんを睨むけど、ちらともひるまない。

「真紅ちゃん、わたしも行っていい?」

「!」

百合緋ちゃんの言葉に肩を跳ねさせたのは架くんだった。

それに気づいたけど、架くんは白ちゃんを苦手としている。

その親友が一緒なのは……と思い、白ちゃんを見上げた。

「白ちゃん……」

「いいよ。百合姫もたまには女子同士でいるのもいいだろう。架も護衛だと言い切っているし」

白ちゃんも女子なんだけどなー、とは思ったが、学校という場所の手前、言わないでおいた。

「俺も少し用が出来た。行っておいで」

親友というにはあふれ出る保護者感。白ちゃんに見送られて、私は百合緋ちゃんと架くんと校庭へ向かった。