生まれついての護り刀のようなものだ。知らず知らずのうちに人はそれに護られている。
陰陽師はそれを具現化させることが出来、白ちゃんは性(さが)である『焔』を自在に操ることが出来て、黒ちゃんは『光』を意のままに操ることが出来る。
私は『風』だということはわかっているけど、まだ自分の意思で操り切れてはいない。
私が生まれ持った力は、総て解き放たれた。あとは、それをコントロール出来るか、だ。
そして、海雨や黎のことが終わっても陰陽師であることを望むのなら、生まれ持ったものだけでなく、自分で得て行く力が必要になる……。
「おかしい……と思うんだけど、どこがおかしいのかわからない……」
無炎さんからの報告を受けて、ずーんと沈んだ。……感覚的にしかわからないところは、まだ成長していなかった。
白ちゃんはからりと笑った。
「そう落ち込むな。俺も気づかなかった『おかしいこと』に気づいたのは真紅の成果だ」
「白ちゃん……」
白ちゃんの爽やかな包容力に感動してしまった。さすが男女問わず籠絡(ろうらく)している人だよ。
「真紅ちゃん、今思ってはいけないことを思ったよ……」
百合緋ちゃんがボソッと何かを言った。
白ちゃんはその美麗な容姿だけでなく、爽やかな行動と柔らかな物腰ですごい人気だ。
……元が女性(にょしょう)だからというのもあるかもしれないが、男子も女子も教師や保護者までも、一度は白ちゃんにときめいたことがあるとも言われていると百合緋ちゃんから聞いた。
「無炎はなんと言っているんだ?」
白ちゃんが寄って来て、紙片を覗き込む。
「うん、校庭の隅に小さなお社(やしろ)があるでしょ? そこを触れて来た風のね、香りが違ってるの」
斎陵学園は広く、学内を回るのに自転車を持ってきたいくらいだと思ったことがある。
その一角。あまり人の寄らない場所には小さな木立(こだち)があり、百葉箱のような形の社があるのだ。
「ああ。あれは鎮守(ちんじゅ)の社だ。確か地神(じがみ)がいたはずだが……」